\(\mathbb{R}^n\)において,有界無限点列は収束する部分列を持つ.
ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理です.
大学1年生もしくは2年生で理系の人間は微積分を学ぶと思います.そして,その中で最初の方に出てくるけどその重要性が全然わからない定理.
ぼくにとってはそんな思い出のある定理です.
最初こんなものを見せられてもぴんと来ないのが普通だと思います.ぼくも初めてこの定理を見たときには何を言っているのかピンときませんでしたし,何がうれしいのかもよくわかりませんでした.
しかし,数学科で2年生に習った位相空間論を踏まえるとこの定理の重要性がようやく理解できました.
この定理の重要性は,ユークリッド空間におけるコンパクト集合の特殊性にあります.
証明は省略しますが,次のような事実が知られています.
距離空間において次の3条件は同値である.
1) コンパクトである.
2) 点列コンパクトである.
3) 全有界かつ完備である.
実はボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理は2)の部分について関連して考えると次のように書き換えられます.
\(\mathbb{R}^n\)において,有界閉集合は点列コンパクトである.
点列コンパクトってなんだっけということを一応確認しておくと,位相空間\(V\)が点列コンパクトであるとは,任意の点列が収束する部分列を持つことでした.
まさにボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理と関連していそうですね.
この言い換えは簡単で,有界閉集合は有界なのでそこに含まれる点列は必ず有界ですよね.それと閉集合性よりあらゆる極限点はもとの集合に含まれることも指摘しておきます.
というわけで,ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理はハイネ・ボレルの定理と同値であるということも証明できます.
ハイネ・ボレルの定理とは,
\(\mathbb{R}^n\)において,有界閉集合はコンパクトである.
という定理です.言い換えたボルツァーノ・ワイエルシュトラスとほぼ同じ形ですよね.
この性質はかなり嬉しい性質なのですが,実はユークリッド空間でしか成り立ちません.
そもそもボルツァーノ・ワイエルシュトラスは実数の連続性と同値であることが示せます.
つまり,ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理はハイネ・ボレルの定理と同値であるということはハイネ・ボレルの定理と実数の連続性が同値だということもわかるのです.
というわけで,ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理は実数が作りだす空間の位相的側面について極めて重要な性質であるというお話でした.