【一階述語論理3】形式的証明と健全性

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論理記号の定義

簡単のため形式的証明で論理式を扱う時には次のように定義されているものとする.

定義(論理記号)
論理記号は,,のみであるとし, 論理式φ,ψについて,

¬φ:=φ,
φψ:=¬φψ,
φψ:=¬(φ¬ψ),
φψ:=(φψ)(ψφ),
xφ:=¬x¬φ.

一階述語論理の証明系H

一階述語論理の証明系H
t,sとそれに添え字を付したものは閉項, xは変数記号, φ,ψ,θを論理式, fF,RPとする. 証明系Hの公理とは,次の形をした閉論理式であるか, 次の形をした論理式の全称閉包のことである.

[公理系]

■ 命題論理の公理
(1)φψφ,
(2)(φψθ)(φψ)φθ,
(3)¬¬φφ,

■ 量化子に関する公理
(4)x(φψ)xφxψ,
(5)x¬φ(x)¬xφ(x),
(6)φ(t)xφ(x),

■ 等号公理
(7)t=t,
(8)t=ss=t,
(9)(t1=t2t2=t3)t1=t3,
(10)(t1=s1t2=s2tn=sn)f(t1,t2,,tn)=f(s1,s2,,sn),
(11)(t1=s1t2=s2tn=sn)R(t1,t2,,tn)R(s1,s2,,sn),

[推論規則]

(MP)φψφψ.

証明の定義

定義(証明・証明可能)
Lを言語, L-閉論理式の集合をΣ, φL-閉論理式とする.証明系Hにおける言語Lについてのφの証明とはL-閉論理式の有限列,

φ1,φ2,,φn,

φn=φであり, φi(i=1,2,,n1)Σの元であるかHの公理であるかj,k<iなるφj,φkからの推論規則(MP)による結論となっているようなものである.
また,Σからの言語Lについてのφの証明が存在するとき言語LについてφΣから証明可能といい,Σφ と表す.特に, Σ=のとき単にφと表す.

演繹定義

定理(演繹定理)
Lを言語, L-閉論理式の集合をΣとする. このとき,次が成り立つ.

ΣφψΣ{φ}ψ.

(証明)
( )
ΓφψかつΓΓ{φ}より,Γ{φ}φψが成り立つ.よって,(MP)よりΓ{φ}ψ.
( )
ψの種類によって場合分けする.
 [1] ψΓのとき.Hの公理(1)よりΓψφψであり,これとψで(MP)を使うことでΓφψを得る(注:ψφψとはψ(φψ)を表すのであった).
 [2] ψHの公理のとき.ΓψおよびHの公理(1)よりΓψφψより(MP)を使えばΓφψを得る.
 [3] ψφのとき. 次の補題4-1で示す.
 [4] ψが(MP)の結論になっているとき.Γ{φ}からのψの証明の長さに関する帰納法で示す.長さの時は[1]~[3]の場合に相当するから示された.証明の長さがnのとき,ある論理式θについてΓ{φ}θψおよびΓ{φ}θが成り立っているから帰納法の仮定より,ΓφθψおよびΓφθを得る. Hの公理(2)より, Γ(φθψ)(φθ)φψが成り立つから(MP)を2回用いることで結論を得る.

対偶法

補題3-1:
Lを言語, φL-閉論理式とする. このとき, 次が成り立つ.

φφ.

(証明)
θφφとすると,

(φθφ)(φθ)φφ, (公理(2))
φθφ, (公理(1))
φφφ, (公理(1))
(φθ)φφ, ((MP)による)
φφ. ((MP)による)

補題3-2(二重否定の付与):
Lを言語, φL-閉論理式とする. このとき, 次が成り立つ.

φ¬¬φ.

(証明)
補題3-1より¬φ¬φが成り立つから,

{¬φ}¬φ, (演繹定理)
{¬φ}φ, (否定の定義)
{¬φ,φ}, (演繹定理)
{φ}¬φ,
{φ}¬¬φ,]
φ¬¬φ.

補題3-3(対偶法):
Lを言語, φ,ψL-閉論理式とする. このとき, 次が成り立つ.

φψ¬ψ¬φ.

(証明)
()

φψ, 
{φ}ψ, (演繹定理)
ψ¬¬ψ, (補題3-2(二重否定の付与))
{φ}¬¬ψ, (直前2つで(MP))
{φ,¬ψ}, (演繹定理と否定の定義)
{¬ψ}¬φ, (演繹定理と否定の定義)
¬ψ¬φ. (演繹定理)

()
 上の証明を逆にたどればよい. ただし, 二重否定の付与の代わりに公理(3)二重否定の除去を使用する.

健全性定理

定理(健全性定理)
Lを言語としΣL-閉論理式の集合, φL-閉論理式とする. このとき, 次が成り立つ.

ΣφΣφ.

(証明)
証明系Hの公理として採用した論理式φφを満たすことと, (MP)が{φ,φψ}ψを満たすことによる.

参考文献

[1] 新井敏康,数学基礎論 増補版,東京大学出版会,2021.

[2] ケネス・キューネン, キューネン数学基礎論講義, 日本評論社,2016.

[3] 鹿島亮, 現代基礎数学15 数理論理学, 朝倉書店, 2009.

[4] Stephen Cole Kleene, Introduction To Meta-Mathematics, Ishi Press Internal, 1952.

[5] Joseph R. Shoenfield, Mathematical Logic, CRC Press, 1967.

[6] Richard E. Hodel, An Introduction to Mathematical Logic, Dover Publications Inc, 1995.

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